1 事案の概要
クライアントは、小売業(雑貨)を営む会社で、その事業規模(売上高約7億円、営業利益約3000万円)に比して、本社ビルの設備投資に係る借入れ等約15億円(金融債権者数約10社)と多額な金融負債を負っていました。他方で、クライアントは、金融機関と交渉等して元本・利息の支払方法について、いわゆるリスケジュールを行うことなく、当初の約定のまま元本・利息を支払っていたため、その返済が事業収益や資金繰りを大きく圧迫していました。
もっとも、クライアントの事業(本業)自体を見れば、黒字(営業黒字)で、金融機関と交渉等することにより事業再建の可能性があると考えられました。
2 解決の概要
弊所はアドバイザリーとして関与し、まずは、元金の支払については一旦ストップした上で、バンクミーティングを開催し、金融機関全行に対し、現状を説明し、金融機関の支援・協力を得ながら事業再建を図ることとしました(金融機関だけと交渉するいわゆる私的整理手続に入りました。取引債務・仕入債務については通常どおり支払いました。)。
提携する公認会計士とも協働しながら、まずは、窮境原因を分析した結果、営業面について代表取締役に依存していること、商品数が多く多数の不良在庫を抱えていること、経営幹部の不存在、間接部門の脆弱さといった問題点が判明しました。
事業再建については、まずは、いわゆる自主再建型とスポンサー支援型の両方の方向性について検討しつつも、前記窮境原因の分析、これに対する施策の実施を行いながらバンクミーティングを重ねる中で、短期間では窮境原因は解消することができず、自主再建は諦めざるを得ない判断し、クライアントにも説明・納得いただきました。その上で、スポンサー探索の結果、唯一見つかったスポンサーとの交渉を重ね、最終的には、事業譲渡を行った上で、破産申立てを行うこととなりました。
これにより、クライアント及び多額の連帯保証債務を負担していた代表取締役はいずれも破産することになりましたが、事業そのものや屋号・ブランド及び従業員の雇用等を守ることができました。また、クライアント代表取締役も新たな職を得て再スタートを切ることができました。